ネトフリで『魔法の恋愛書』と言うオムニバス恋愛映画を観た。
軽い感じだが、なかなか面白かった。
この映画の原作者は、スティーブ・ハーベイと言うコメディアンで
映画内にも「恋愛本を出版した本人役」で出演している。
ハーベイの本は2010年ごろに日本語にも翻訳されている。
邦題は『世界中の女性が幸せをつかんだ魔法の恋愛書』。
現在は中古でしか出回ってないようだ。
原題は「Act like a Lady Think like a Man」。
つまり「表面では淑女のように振る舞い、
内面では男のように考える」そうする事で、
女性は、男性に遊ばれたりせず、良い恋愛ができるようになる、
と言う内容の本である。
映画のストーリーは、大体こんな感じだ。
いつもバーでつるんでる5人の男たち。
プレイボーイ、マザコン、仕事が不安定など、
それぞれ本命にするには一癖も二癖もある面々。
それらの所謂「ダメ男」と出会った女性陣が、ハーベイの本を読んで
実践した結果、ダメ男がいい男になり素敵な恋愛相手になる、
と言うような内容。確かに「魔法」ですね。
出演者には、今より若くて痩せてるケヴィン・ハートや、
『40歳の童貞男』に出ていたロマニー・マルコ、
哀しい目つきが印象深いマイケル・イーリーなど。
ほぼ黒人ばかりのキャストの中、少数派の白人キャラクターとして
「アントラージュ オレたちのハリウッド」の
タートル役で出ていたジェリー・フェレーラも出ている。
女優陣も含めると『きのうの夜は…』と言う恋愛オムニバス映画の
出演者と結構かぶる気がしている。
調べたら「Think Like a Man Too」と言う続編も作られているらしい。
今度、観てみよう。
この手の恋愛指南本が原作の映画、ドラマと言うのは
意外と作られていて、割と有名なのは
『そんな彼なら捨てちゃえば』と言うオムニバス映画。
ドリュー・バリモア、ジェニファー・アニストン、ベン・アフレックなど、
それぞれが単体で主演をはれる位、知名度がある俳優が出ている。
ちなみに、この映画にも「アントラージュ オレたちのハリウッド」の
メインキャストのケヴィン・コナリーが出ている。
原作者は「SATC」の脚本家グレッグ・ベーレントとリズ・タシロ。
「そんな彼なら捨てちゃえば」「恋愛修行 最高のパートナーと
結婚するための恋愛心得」と言う2つの本を下敷きにしている。
この映画のキモは、惚れっぽいけどモテない女性ジジが、
モテ男のアレックスに恋愛指南を受ける所。
(以下、2人のパートのネタバレになります。)
映画の原題である「He's Just Not That into You」=
「彼は君の事、興味ないんだよ」と言うのは
ジジに対してアレックスが放つ言葉。
何をされても男性から気があるサインに思えてしまうジジ。
夢見がちな彼女に対して、アレックスは厳しいコメントばかりする。
しかし、最後にジジはアレックスにキレる。
「あなたは人を愛する気落ちを知ってるの?
別に勘違いだって構わないわ」と言われたアレックス。
いつも恋愛に冷めていた彼は、戦略を忘れ、ジジを好きになる。
この、恋愛指南していた人が指南相手を好きになる、
と言う「ミイラ取りがミイラになる」パターン。
実は日本のドラマでも見た事がある。
それは水野敬也氏の「スパルタ婚活塾」が原作のドラマ
「私結婚できないんじゃなくて、しないんです」。
(以下、ラストまでドラマのネタバレします)
このドラマ、前述した二作品とは違い、
オムニバスではなく、主人公は1人だけ。
顔も頭もよく高嶺の花と言われるアラフォーの女医みやびは、
長年恋愛から遠ざかっていた為、いざ彼氏を作ろうと思っても
上から目線が邪魔をして上手くいかない。
そのみやびに、藤木直人演じる小料理屋の主人、十倉が
モテるための秘訣をスパルタで教える、と言うストーリー。
みやびは、十倉の指南によって、年下のイケメンや
高校の同級生と恋愛をする。
しかし、最後はお互い本音で言い合える十倉が好きだと気づく。
十倉の方もみやびを好きになっているが、
それを認めず、最後まで喧嘩をしてドラマは終わる。
この喧嘩が、所謂カップルのイチャイチャした喧嘩ではなく、
割と本気の「怒鳴り合い」で終わるのである。
コメディなので、分かりやすいハッピーエンドではなくても良いのかな、
とも思うが、視聴者としては、結構な消化不良であった。
私の推理として、このドラマの藤木直人は、
恋愛指南書の書き手である水野敬也の立場であるから、
本来は恋愛相手になってはいけないのだ。
何故なら、十倉とみやびは恋愛テクニックを介さずに恋に落ちた訳で、
その二人が上手くいってしまうと、それはつまり
「スパルタ婚活塾」の恋愛指南は必要ない、と言う事になるからだ。
しかし逆に、十倉の恋愛テクニックによって、みやびが誰かと結婚する
と言う終わり方だと、それはそれで盛り上がりに欠ける。
オムニバス映画であれば、気にならないかもしれないが、
主人公は1人だけの連続ドラマなので、最後の恋愛相手(=ラスボス)は
それなりに手応えのある相手でないと難しい。
十倉とみやびの関係には嘘(=恋愛テクニック)がない為、
ラスボスが十倉なのは納得いくが、
「スパルタ婚活塾」自体を否定してもいけない、
これはなかなかのジレンマである。
水野敬也氏の書籍は「夢を叶えるゾウ」や「LOVE理論」が有名で、
どちらも、師匠が弟子を導く形でドラマ化もされている。
「LOVE理論」は師匠と弟子が同性なので問題なかったし、
「夢を叶えるゾウ」も神様と人間なので大丈夫だった。
「スパルタ婚活塾」は男性が女性に教える形だったから、
ドラマ化の際にちょっと難しかったのかな、と思う。
「私結婚できないんじゃなくて、しないんです」は
シャープなイメージの夏木マリが演じる可愛いお母さんのギャップ、など
他の出演者も全てハマっていて、個人的には
非常に好きな作品なので、今も時々見返してしまうドラマである。
以前に「大豆田とわ子と三人の元夫」を
スクリューボールコメディとして紹介したが、
「私結婚できないんじゃなくて、しないんです」も
都会的な男女の丁々発止の会話が観れて、
スクリューボール的なドラマ作品だと思う。面白いです。