アメリカン・コメディ好きの部屋

アメリカのコメディとコメディアンが好きです。時間がある時に更新します。

『プロミシング・ヤング・ウーマン』面白かった

『プロミシング・ヤング・ウーマン』を観ましたが、

とても面白かったです。

 

以下、ネタバレ感想。

 

『プロミシング・ヤング・ウーマン』の本国の予告編には

アメリカのコメディとかドラマ好きには

見覚えのある顔がちょこちょこ出てきます。

 

www.youtube.com

 

予告の最初の方に出てくるのは「The O.C.」というドラマで

気のいいオタク青年を演じたアダム・ブロディ。

酔っ払ったふりをした主人公のキャシーを持ち帰って、

コトにおよぼうとしたら、突然シラフに戻られて戸惑う、

というシーンが使われています。

 

次は『スーパーバッド/童貞ウォーズ』で映画デビューした

俳優のクリストファー・ミンツ・プラッセ

彼も弱くてモテないオタクのイメージが強い俳優です。

主人公の鼻にキスをし「僕はナイスガイだよ」と言うのですが、

「じゃあ、あんたは私の何を知ってる訳?」と

問い詰められてタジタジになる姿が、予告では切りとられています。

 

主人公と一緒にワインを飲む女性は

私が大好きなコメディドラマ「コミ・カレ!!」に出てるアリソン・ブリー

彼女は目がくりっとして、キュートなルックスをしています。

実家暮らしの主人公とは違い、結婚して子育てにいそしむ勝ち組女子役です。

予告では分かりませんが、映画内で非常に重要な役割を果たします。

 

最後の方で、ほんの一瞬映るのが「New Girl / ダサかわ女子と三銃士」に出ていた

マックス・グリーンフィールド。

彼は「New Girl」のドラマ内では女性に囲まれた職場で働いており、

また、ドラマのヒロインのジェスと一緒にシェアハウスで

同居をする男性(=三銃士)のうちの1人。

女性が製作した女性向けドラマでのメインの男性キャストなので、

好感度は高い俳優だと思います。

 

 

下記のリンクは、『プロミシング・ヤング・ウーマン』を監督した

エメラルド・フェネルのインタビューですが、ドラマなどで好感を持たれている

役者を多く起用したのは意図的だそうです。

front-row.jp

 

 

さて、『プロミシング・ヤング・ウーマン』の監督で、脚本を書いた

エメラルド・フェネルは「主人公キャシーの計画を

ネタバレしないでほしい」と言っているので、

この記事には直接書きませんが、普通に読めば想像がついてしまうと思うので、

ここから先は映画を未見の人は読まない方が良いと思います。

 

 

大前提として、主人公は「男に復讐するため」毎週末に、

酔っ払ったふりをしてお持ち帰りをされている、と言う話ですが。

当たり前だけど、これって非常に危険な行為なんですよね。

 

この映画の中で一番よわっちい男子として出てきたであろう

クリストファー・ミンツ・プラッセとのシーンでは、

男の家に着いたけれど、キャシーがシラフなのに気付いたので、

男がビビって「出てけ」と言われるのですが、みんながみんな、

そんな簡単に帰らせてくれないだろうな、と思う訳です。

彼はコメディ映画でデビューしたので、これらは、気まずいけど笑えるシーン

(弱った女しかナンパできない情けない男)として描かれていると思うのですが、

中には、騙された事に逆ギレするタイプの男もいるはずですし。

 

結局、キャシーは、親友を失った時に心が死んでしまって

(彼女の身につけている、ハートの片割れのネックレスでも示されてる通り)

目的をなくして生きていたんだと思います。

精神的に成長ができず、家族にも心を閉ざし。

 

キャシーには、男への復讐を生きがいにするような強い信念はなく、

危ない行為を続けるのは、リストカットのような、自傷行為をするのと同じ。

酔ったふりをして、男を試し、説教もするけれど、

男が本気で怒ったら、暴行されたり、殺されたりする

可能性も充分ある訳で。

 

その辺の危うさを前半では巧妙に隠しているけれど、

主人公がクライマックスでとった行為から考えると、

この主人公は男が憎くて復讐したかったと言うよりも、

ずっと、この世から消えたかったんだろうな、と思う訳です。

キャシーが、女性の登場人物にした復讐を考えると、

かなり賢くて計算ができるはずなので、本当に相手を

抹殺したいのであれば、他にも方法があったと思うのです。

 

キャシーの彼氏になった男性も、非常にガタイが良くて

「一緒にいると相手が子供に見えないか心配」と言うセリフがありましたし、

バチェラーパーティの主役、アル役のクリス・ローウェルや

友人役の「New Girl」のマックスグリーン・フィールドも

ムキムキのマッチョな二の腕をしていました。

ぽきっと折れてしまいそうな、キャシーの細い二の腕との

体格差は一目瞭然なわけで。

 

あのラストを観てはじめて、「キャシーの本心」が

見えるのでないか、と思いました。

 

 

話は変わりますが、事前の情報から、映画本編を観る前は、

もっとホラーっぽいシーンがあるのかな、と思っていました。

 

フェネル監督が関わった「キリング・イブ」と言うドラマを、

私はシーズン1だけ観ていますが、あのドラマには

サイコパスの女性暗殺者が出てきて、なかなか非情なんですよね。

彼女のイメージから、キャシーは医学部出身だし、人体の急所をついて、

鮮やかに人殺しをするのではないか、と思っていました。

 

 

また、本国のポスタービジュアルに使われたイラストや

劇中のセリフ「90年代の映画かよ」などから、

B級、C級な低予算のホラー映画によくある、脱ぎっぷりのいい

若手女優が出ていて、血しぶきが飛ぶショッキングな殺しのシーンが

出てくるような、そんなイメージも持っていました。

(個人的には、ちょっと前に、キアヌ・リーブス主演でリメイクされた

『メイクアップ(原題は『ノックノック』)』と言うスリラー映画や、

レンタルビデオ屋に大量にあるエロティックホラーっぽいイメージを想起してました)

 

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リアルイラストを使ったポスターは、なんだか80’sホラーっぽい雰囲気

 

しかし、実際はソフィア・コッポラの映画『マリー・アントワネット』みたいな

ピンクや水色のパステルカラーと、ポップソングに彩られており

観客の先入観やイメージを裏切る映画だな、と思いました。

 

 

パンフレットやネットの記事を読むと、スリラー映画でありながらも

「現場の大半は、ロマンチックコメディの撮影のようだった」らしく、

パリス・ヒルトンブリトニー・スピアーズのヒット曲を背景に、

ティーンエイジャーが着るような薄手の花柄のトップスや、

マーブルチョコのようにカラフルなマニキュアなど、

ポップでガーリーな色合いがちりばめられていました。

また、妙にデコラティブな実家の居間や寝室のインテリアなど、

そこかしこに人工的な甘さが感じられるのですが、

主人公の暗い表情や、キャリー・マリガンの実年齢にはそぐわない服装が

「子供部屋おばさん」「老けたロリータ」のようで、

成熟せずに年だけとってしまったちぐはぐさや、痛々しさを感じました。

 

個性的で非常に面白い映画でした。

 

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この顔がキューブリック版「ロリータ」の飴を舐めてる顔に似てると思ったのですが

 

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角度は似てるけど、そこまでそっくりではなかったです