アメリカン・コメディ好きの部屋

アメリカのコメディとコメディアンが好きです。時間がある時に更新します。

Bunkamura配信映画『ロマンチック・コメディ』を観た

先日、Bunkamura ル・シネマのオンライン映画館

APARTMENT で配信されている『ロマンチック・コメディ』と言う

映画を観た。面白かった。

 

www.bunkamura.co.jp

サイトの説明によると「本作は幾多の名作映画の実際のシーン映像を抜粋し、」

「『ロマコメ映画とは? 愛とは?』というテーマを探求し、

自己発見の旅に出るフィルム・エッセイである。」

「監督はインディポップ・バンド Summer Campのエリザベス・サンキー」で

「ドキュメンタリー『ビヨンド・クルーレス』のサントラも務めた」との事。

「旧来のロマコメ映画を礼賛すると同時に、現代的な視点で問題提起を行う本作」

と言う説明通り、ロマコメの負の側面も語っていて面白かった。

 

映画『ロマンチック・コメディ』の中で簡単に説明されていたが、

ロマンチック・コメディの原型は、スクリューボール・コメディである

と言われており、典型としては、気が強く自立した女性と男性が、

最初は衝突をしながらも、いつしか恋に落ちると言うものである。

 

Wikiによると、1950年代からは

「ハリウッドが中産階級内部での恋のかけひきに焦点を移して

シンプルなラブ・コメディへと発展解消していったため」

スクリューボール・コメディと銘打った作品が作られなくなったと書いてある。

ja.wikipedia.org

つまり、スクリューボール・コメディの魅力である、スピード感や

丁々発止の台詞の面白さ、型にはまらない自立した女性像などの

特徴的な部分を減らして、より単純にしたのが、

ジャンルとしての〝ロマンチック・コメディ〟なのだ。

 

 

ロマンチックコメディの負の側面、と言う事を書いたが、

〝ロマンチック・コメディ〟と言うジャンルは、

「女性向けの映画で、陳腐で先の予想できる作品が多い」

と言うイメージもある。

「男女が出会い、色々揉めるが、最終的には誤解が解けて、

ハッピーエンド」と言うパターンが基本で、

結婚式がラストシーンになる事も多い。

「いい男に出会えれば、素敵な結婚をすれば全て解決!」

と言う安易なラストが多い、そんな印象もある。

 

また「中産階級内部での恋のかけひき」と言う表現にもあるように

「恋愛以外の諸問題を意図的に排除した映画」と言う側面もあり、

アクションやCGを使った派手な見せ場もなく、

お決まりのストーリーで、粗製乱造されてる印象もある。

 

 

とまぁ、とかく軽く見られがちな〝ロマンチック・コメディ〟ではあるが、

ジャンルをはみ出した傑作と言うのが時々存在する。

映画『ロマンチック・コメディ』でも触れられていたが、まずは

結婚式を前に花婿付添人を探す映画『40男のバージンロード』。

これは、主役が男性で運命の相手も男性(結婚相手ではない)

と言う変化球(=スクリューボール)パターンで、

「ブロマンス映画」と言う言葉を産んだ傑作コメディ映画。

 

ストーリーは、全くタイプの逆な男性同士が出会い、

衝突したり誤解しながら、最終的には絆を深める。

多くのロマコメのラストと同じく、最後は結婚式場で

I Love You, Man(映画の原題)」とお互いの愛を確かめ合う。

女性向けロマンチックコメディの典型に、ひねりを加えて

別種の映画に変えた傑作である。

 

ja.wikipedia.org

 

もうひとつ、ロマンチック・コメディと言う古い皮袋に、新しい酒を注いだ

傑作映画として『プロミシング・ヤング・ウーマン』がある。

私の過去の感想に「フェネル監督はパンフレットに

『現場の大半は、ロマンチックコメディの撮影のようだった』と語っている」

と書いてあるので、意図的にロマコメ演出をしていたと思われる。

(注 「古い皮袋に〜」は本来ネガティブな諺らしいが、

今回は良い意味、成功例として使っております)

 

makarena3.hatenablog.com

 

 

この映画は実際の事件からインスパイアされている。

それは、スタンフォード大の学生が起こしたレイプ事件で、

裁判中に「加害者の男性は優秀なスポーツマンで

前途有望(=Promising Young Man)である」と言う言葉が出たらしい。

www.buzzfeed.com

 

「前途有望な男性を仲間がかばい、被害者女性を無視する」

と言う重い内容を、あえてポップな意匠で描いたこの作品。

作品を観返してみると「独身女性が出会いを求める」→

「いろんなクズ男に出会う」→「運命の相手と出会い仲良くなる」

と言う部分と、「最後に結婚式で終わる」部分は、

典型的なロマコメのパターンである。

しかし、「運命の相手と出会って幸せになる」と言う

ロマコメの安易、安直と思える部分が、この映画では

「出会ったけど救われない」と言う絶望に裏返る。

恋の相手に出会い、そこで心底絶望した事が、

最後の復讐を選ぶキッカケになると言う皮肉である。

 

今回、『プロミシング・ヤング・ウーマン』を、

アマゾンプライムの配信で見返したが、イヤホンで

視聴していたので、映画館で観た時よりも音声が生々しかった。

クライマックスの山小屋のシーンは、やたらベッドが軋むので、

音だけ聞くと性的暴行シーンのように聞こえ、非常に怖かった。

 

 

映画『ロマンチック・コメディ』から、かなり脱線した。

余談ついでに「スクリューボール・コメディ」映画を意識して

作られた日本のドラマの傑作を紹介する。

「大豆田とわ子と三人の元夫」である。

 

thetv.jp

テンポの良い会話、自立した女性と個性的な男性陣の都会的なラブコメディ、

確かに「スクリューボール・コメディ」である。

こちらも大変面白いのでオススメ。

 

ちなみに、「大豆田とわ子と三人の元夫」の脚本家

坂元裕二さんのインスタには、スクリューボール・コメディ

オススメ作品群が上がっていた。

今回のようなお話に興味を持った方に、個人的に

おすすめしたいものがあるのです。画像2枚目のDVD

「名作映画コレクション 夢のひととき」を観るのです。

税込み1980円で、傑作ばかりの10作品が入っています。」

だそう。こちらも面白そう。

 

 

坂元さんのインスタからお借りしました