読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

アメリカン・コメディ好きの部屋

アメリカのコメディとコメディアンが好きです。気が向いた時に更新します。

『ラ・ラ・ランド』公開記念! エマ・ストーンに恋した男の物語 前編

ラ・ラ・ランド』でアカデミー賞の主演女優を見事獲得したエマ・ストーン。彼女に対して、ある俳優が公開ラブレターを送ったのをご存知だろうか。彼の名前はジム・キャリー。1990年代に大人気となったコメディアン兼俳優である。

 

事件は2011年8月24日に起こった。ジム・キャリーが自分の公式サイトに、突然、エマへの愛を告白する動画をアップしたのである。

 


Jim Carrey confesses his love for Emma Stone!!

 

ジムの主張を簡単にまとめると「エマ・ストーン、君はとても美しい。自分が若かったら結婚したい。でも年の差があるし(当時エマは22歳でジムは49歳)無理だろう。最近、とみに老いを感じるし。オシッコの切れも悪いんだ……。君は特別にかわいい、このまま成功して芸術的な仕事を続けてくれ。(無音で)愛してるよ」。

カメラ目線でエマへの愛を訴えるジムの姿は、エマの主演作『小悪魔はなぜモテる?!』のパロディのように思われた。

 

この動画がアップされた翌日、フォーブスの公式サイトに、辛辣な記事が載った。

www.forbes.com

 

 「The Worst Thing About Jim Carrey's Video To Emma Stone」というこの記事の結論は「最悪なのが、ジム・キャリーがビデオの最後、声を出さずに『アイ・ラブ・ユー』と言う姿。アゴが震えていて、まるでジャスティン・ビーバーを前にしたティーンのようだった。もっと真摯に演じていたら、印象が良かったのに。これこそ、キャリーがロビン・ウィリアムスジェリー・ルイストム・ハンクスのようなドラマチックな俳優のレベルに達しない理由だと思う」

よほどキモかったのであろう。たった一本の動画で、彼の俳優人生まで完全否定。同記事によると、エマ・ストーン本人はビデオ投下の同日に、自身のYOUTUBE公式チャンネルで“Should I be flattered or seek an order of protection?(光栄に思うべきか、護衛をつけるべきか迷うわ)”とコメントしていたらしいが、現在は見当たらないので、削除されたようである。

 

また、別のサイトでは「このビデオが『Funny or Die』にアップされていたら笑えたのに」と言う、もっともな意見もあった(『Funny or Die』とはコメディアンのウィル・フェレルらが創設したコメディ動画の専門サイトの事)。

本気なのか冗談なのか、笑っていいのか戦慄すべきなのか、エマ本人を含め、見た人を中途半端で落ち着かない気分にさせたジム・キャリー、コメディアン失格と言われても仕方がない、ダダすべりの大失態であった。

 

 

***************************************

 

 

本国アメリカだけではなく、遠く離れた日本でも多くのゴシップサイトがこの件を取り上げ、「ジムの最新作『空飛ぶペンギン』の宣伝では?」「Youtube上でキモい愛の告白をするのが流行ってるらしい」など憶測が飛びかった。実際に、ジムの公式サイトはこの動画がアップされた事で、一時的にサーバーがパンクしたらしく、炎上商法を疑われても、無理はなかったようだ。

 

日本に住むジム・キャリーのいちファンである私は、なぜ、こんな動画をジムが投稿したのか分からなかった。パートナーであったジェニー・マッカーシー(元プレイメイトのタレント兼女優。メリッサ・マッカーシーの従姉妹)と2010年に破局した事は知っていたし、エマ・ストーンが可愛い事も分かっているが、「なんでまた急に」「どなたか、この飛行機の中にお医者様はいませんか?」など、色々と心配になったものである。

 

だが、1本の映画を観た事によって、その謎はとけた。

2011年11月に日本公開された『ラブ・アゲイン(原題:Crazy,Stupid,Love)』である。スティーブ・カレル主演のロマンチック・コメディで、真面目なエマ・ストーンがプレイボーイのライアン・ゴズリングと出会い、恋に落ちる役を演じていた。つまり『ラ・ラ・ランド』のミアとセブである。

ラブ・アゲイン』の全米公開は2011年7月29日。ジムのビデオ投下は8月24日。この映画を観て、ジムがエマに恋をしたのは間違いなかった。

 


Crazy, Stupid, Love - Trailer

 

この作品のエマ・ストーンが魅力的なのは言うまでもないが、実はもっと重要な事がある。『ラブ・アゲイン』の監督であるグレン・フィカーラジョン・レクアは、2009年のジムの主演作『フィリップ、きみを愛してる!』の脚本家兼監督だったのだ。ジムは『フィリップ~』の脚本に惚れ込み「完璧な脚本でお金を払ってでも出たい」と考えた。また、『フィリップ~』の監督がなかなか決まらなかった時に、脚本家の2人を監督として推薦したのもジムだった。彼らにとって長編映画の監督ははじめての経験だった。自分が惚れ込んだ脚本家コンビの監督2作目を確認するつもりで、ジムは映画館に行ったのだろう。

 


フィリップ、きみを愛してる!

 

もうひとつ重要なのは、主演のスティーブ・カレル。彼は、2003年にジムの主演作『ブルース・オールマイティ』でライバル役を演じて注目された。それまではテレビの『The Daily Show』というコメディ番組に出演していたが、大作映画に重要な役で出たのは、この時がはじめてであった。ちなみにカレルは当時、自分の出演シーンが全部カットされるかもと思っていたらしい。だが『ブルース~』は大ヒットし、カレルの知名度もあがった為、2007年に作られた続編の『エヴァン・オールマイティ』では、脇役だったカレルが主役を演じるまでになった。

 

余談だがブルース・オールマイティ』で、ジム・キャリー演じる主人公の特殊能力によって、生放送中に大失敗をさせられるスティーブ・カレルのシーン。カレルのクソ真面目な雰囲気が非常に面白い。


Bruce Almighty - Evan Baxter News Report (HD) Funny Scene

 

 

カレルとジムは同年代。『ブルース~』から『ラブ・アゲイン』にいたるまでの約10年、カレルは着実にキャリアを積み上げて、『40歳の童貞男』のようなコメディだけでなく、大人向けの深みのある作品にも主演できる、魅力あるスターに成長していた。

ひるがえって、2011年に公開された、ジムの主演作『空飛ぶペンギン』は絵本を原作にした子供向けの作品で、出来が良いとは言えなかった。日本においては、ジムがスターになってから初めてのDVDスルー作品でもある。

 

ジムにとって、『ラブ・アゲイン』という作品は、同じ業界にいる身として、単に映画を観て感動する以上の「何か」を感じさせる作品だったのだと思う。自分がキャリアの後押しをした監督達が、素晴らしい作品を撮った事には感動しただろうし、自分より格下だった地味目の俳優に、追い抜かれたようにも感じたのではないか。

いわば石川啄木の「友がみな我よりえらく見ゆる日よ」というアレであるが、下の句である「花を買い来て妻としたしむ」事が、諸事情により出来ず、様々な思いが溢れ出して、エマ・ストーンへの唐突な愛情表現(文字通りCrazyでStupidなLoveっすね)という形で現れたのでは、と想像するのである。有り体に言えば、ミッドライフ・クライシスである。

 

 

***************************************

 

 

長くなったので、後編に続く。

 

makarena3.hatenablog.com