アメリカン・コメディ好きの部屋

アメリカのコメディとコメディアンが好きです。時間がある時に更新します。

「テラスハウス」とは何か 私の考え

このブログにも度々感想を書いているが、リアリティショーが好きである。

 

ひとくちにリアリティショーと言っても、色々な種類がある。

大きく分けると、ひとつめはドキュメンタリーに近いもの。

ふたつめはゲームやドッキリなど、番組側に仕掛けがあって、

それに出演者がチャレンジするタイプのもの。

こまかく見ていくと、他にもあるかもしれないが、

ひとまず、思いつくのはこの2種類だ。

 

ひとつめの「ドキュメンタリーに近いタイプ」で、

私が観た事があるのは、Netflixで配信されている「クィア・アイ」や

MTVやHuluで配信されている「キャットフィッシュ

~リアルレポート ネット恋愛の落とし穴~」など。

問題を抱えている人のところに行き、その解決を手伝う番組である。

日本で言えば、家のリフォームをする「大改造‼️劇的ビフォアーアフター

なども、このジャンルに入るだろう。

あくまで「現実を扱ったTVショー」なので、ドキュメンタリー作品よりも

扱うテーマが軽く、個人的な問題をとり扱うものが多い。

 

また、セレブに密着するタイプのリアリティショーや、

「ビッグ・ダディ」に象徴される大家族ものも、

ドキュメンタリータイプの作品と言って良いだろう。

撮影される対象者の生活環境や常識が、世間一般と

かけ離れていて事件が起こりやすい環境のため、

リアリティショーの題材となりやすいのである。

 

www.mtvjapan.com

 

ふたつめの「何か仕掛けがあって出演者がチャレンジするもの」は

幅が広いが、日本でよく見かけるのは、恋愛系のリアリティショー

アマゾンプライムの「バチェラー・ジャパン」や

MTVやHuluで配信されている「アー・ユー・ザ・ワン

~奇跡の出会いは100万ドル!」は、ゲーム形式で戦うタイプの

リアリティショーで、出演者同士をきそわせる事が目的の、

恋愛系の中では過激なタイプのショーである。

 

 

また、日本のabemaTVでは「恋リア」と言うジャンルで、

沢山の恋愛リアリティショーが配信されているが、

日本が製作した番組は「美しい話」「切ない話」に持っていく

タイプが多く、バトルを楽しむアメリカ系とはタイプが異なるようだ。

 

恋愛リアリティショーとして、過去、日本で一番人気があったのは、

フジテレビの「あいのり」ではないかと思う。

1999年に始まって10年ほど続いた後、しばらく間があいてから、

2018年にフジテレビとNetflixの共同製作で、復活した

人間観察バラエティ」番組である。

旅先での体験を描くところはドキュメンタリーっぽいが、

旅の仲間に告白したら帰国する、というところが

ルールのあるゲーム系のリアリティショーに分類できると思われる。

 

ja.wikipedia.org

 

 

日本のわびさびを感じる(?)リアリティショー「テラスハウス

 

 

同じくフジテレビが製作している「テラスハウス」も

恋愛リアリティショーの一種なのだが、この番組はちょっと変わっている。

テラスハウス」とは、フジテレビで2012年から放送が始まり、

写真集や映画版が作られるなど、若者の間でブームになった番組。

2015年からはNetflixとフジの共同製作となり、海外にも配信されるようになった。

この番組の最大の特徴は、リアリティショーに良くある

大げさなテロップや演出がないところ。

番組が用意した素敵な車とオシャレなインテリアの家で、

見知らぬ男女6人が共同生活をする様子を、ただただ放送すると言う

コンセプトである。(そこだけ聞くとドキュメンタリー風ではある)

 

共同生活を送る男女は、モデルやミュージシャン、サーファーなど

何かしら個性を活かした職業についている人が多く、

その中で芽生える恋や、自分の仕事に対する悩みなどが描かれ、

 まるで「海外のおしゃれな青春ドラマ」を観ているような気分が

味わえる番組である……と、とりあえず言っておこう。

 

 

テラスハウス」が2018年にアメリカの「TIME誌」に取り上げられた時に、

アメリカ人の自己主張の激しさと全く違う、淡々とした日常を感じる番組

として、日本の『わびさび』みたいなものがある」と書かれていたそうだが、

これは、言い換えれば「何も起こらないリアリティショー」

退屈の一歩手前」と言うこともできる番組ではある。

 

 

www.cinematoday.jp

 

オシャレな職業についている人達と言っても、

単に共同生活するだけでは、大した事件は起こらない。

その退屈を回避するための仕掛けが、この番組にはいくつかある。

 

仕掛けその1、入居前の住人インタビューで

テラスハウスで何をしたいか、目標はあるか」などを聞く。

 

仕掛けその2、自分の目標を達成した住人は、番組を卒業し、

新しい住人と入れ替わる事で、停滞を防ぐ。

 

仕掛けその3、住人の中で、気の合う異性をみつけて、

デートに誘ったり、告白をしたりする。

また恋の経過がどうなっているか、住人同士で話し合うシーンもある。

 

仕掛けその4、テラスハウス住人を観察する側として

別のスタジオにタレントたちを用意し、住人の行動を分析する。

テラスハウス内で、特に大きな問題が起こらない時には、

スタジオのメンバーが話芸で盛り上げたり、

住人同士の関係を推理したりして(単なる邪推に近い時もあるw)

視聴者を飽きさせないようになっている。

 

 

以上が私の思う、この番組の仕掛けである。

 

 

テラスハウス」に入る住民の目標、目的とは

 

 

テラスハウス」では、入居する住民の目標について、

入居直前インタビューというのがアップされる。

本編の放送とは別に、YOUTUBEの「テラスハウス公式サイト」に

インタビューがアップされるが、内容は基本的に

自己紹介と今後の目標(=仕事や進路、理想の恋愛など)

テラスハウスに入る意気込み、あたりである。

 

 仕掛けその2に書いた「目標を達成すると卒業」というのは

「あいのり」の「気になる異性に告白したら帰国」と

同じ構成であり、「テラスハウス」の場合は、

恋愛に特化してないふりをしているが、

実際には、恋愛である程度の見せ場を作るか、

これ以上、誰とも恋愛できそうにないとなったら、

お役御免となるパターンが多い。

 

 

恋愛以外の見せ場としては、仕事での活躍シーンもある。

ミュージシャンなら自分のステージ姿、

モデルなら雑誌の撮影でのポージングを見せる。

サーファーならサーフィンをするなど、

自分の仕事でうまく見せ場を作れるメンバーもいるが、

スノーボーダーなのにぎっくり腰で動けなかったり

ホッケー選手が、ここ一番の試合で負けてしまったりするため、

恋愛の見せ場の方が実現しやすい、と考えて良いだろう。

本業が失敗する姿はまずいが、恋愛であれば、

失恋してもプライベートの事だし、かえって共感される場合も多いだろう。

 

 

テラスハウスに入る住民には、インタビューで答えた表向きの回答とは別に

本当に叶えたい目標目的の両方があると思う。

テラスハウスに入る住民の目標は「プライベートの姿を見せて共感を得る」だが、

目的は「顔と名前を売って仕事のステップアップを図る」こと。

目標を達成できれば、目的も達成できるが、

目標を達成できない(=共感ではなく反感を買う)と、

目的も達成できない(=ステップアップに役立たない

これが「テラスハウス」というリアリティショーの構造である。

 

 

「あいのり」には映るが「テラスハウス」には映らないもの

 

 

テラスハウス」と「あいのり」は同じフジテレビ系なので

同列に言及される事が多いが、表面的なテイストはかなり違う。

 

「あいのり」出演者の中には「本当はテラハに出たかった」という人もいるが、

「あいのり」向きか「テラスハウス」向きかというのを簡単に言うと、

泥臭いタイプ」か「オシャレなタイプ」かである。

 

「あいのり」は「真実の愛を見つける旅」がコンセプトなので、

ダサかったりモテないタイプの純情系、ネタ系男子が

たびたび投入されるが、「テラスハウス」は外見重視

見た目がイマイチな場合は、職業面がある程度、確立していないと

選ばれないようになっている気がする。

また「あいのり」の方が素人っぽさ、純粋さ、純真さを重視しており、

テラスハウス」は芸能人、モデル、スポーツ選手、と言う

イメージで、ベクトルとしては反対である。

 

また、「あいのり」には時々映るが、「テラスハウス」では

絶対映らないものがある。それはスタッフの姿である。

これは「リアリティショー」でありながら「恋愛ドラマ」に

印象を近づけるために、意識してやっている事だと思う。

 

「あいのり」であれば「今、誰に矢印が向いてるか」を

スタッフに話したり、日記に心情を書いたりするが、

テラスハウス」では、住民同士で積極的に恋バナをするよう

スタッフが指示を出していると思われる。

 

本来はリアリティショーの裏方がやる事を、住民同士にやらせて、

出演者がお互いに、番組の進行のためのキューを出す係りに

なっているのだ。そこが「テラスハウス」の特殊なところである。

 

「あいのり」だけでなく「バチェラー・ジャパン」でも

出演者がカメラに向かって、自分の今の気持ちを告白する

シーンが出てくるが、この行為がなぜ必要かと言うと、

決まった脚本がないリアリティショーの場合、出演者が

何を考えて行動したかが視聴者には分かりづらいからである。

(余談だが、リアリティショーによくある、出演者がカメラに向かって

喋るシーンは、映画や演劇用語で言う所の「第四の壁を破壊」する行為に似ている。

画面の中から視聴者に向かって、直接話しかけてるように見えるからだ)

 

 

ja.wikipedia.org

 

ドラマや映画の場合、登場人物の行動に、どのような動機があるか、

説明ゼリフや表情などで示されるが、リアリティショーの出演者は、

生身の人間なので、きちんと計算された行動はとれない

本人にとっては自明でも、他人にとっては意味不明な言動をする

というのは現実でもよく見かける事である。

 

しかし、その「計算外の面白さ」こそがドラマにはない、

リアリティショーの醍醐味

ドラマの場合、類型パターンや、古典的な展開、

人気のある物語などが、すでに多く存在してるが、

リアリティショーの場合は、物語のコントロールが難しく、

予想と違う動きがあったり、言ってる事とやってる事が

矛盾していてたりと言う、偶発的、突発的な部分を楽しむのが

目的で、そこが一番の魅力なのである。

 

 

 結末から逆算して物語を紡ぐ、それがリアリティショー

 

 

テラスハウス」では、青春恋愛ドラマのプレイヤーとして

6人の男女が集まり、個々人の目標を達成したら卒業していくが、

恋愛フラグが立ったと思ったら、途中で消えてしまったり、

清純キャラで入居したのに、とんでもない下衆発言をして

スタジオや視聴者をドン引きさせたりする。

「あれはどうなったの?」「この人、こんな性格だっけ?」

と言う、予想外の物語が紡がれる。

出演者同士の面白い物語にたどり着くまでの途中経過で、

無駄になったカットが膨大にあるはずだ。

 

脚本がある映像作品は、撮る内容をある程度決めてから動くが、

リアリティショーの場合は、先を予想しつつ、

ハプニングの瞬間を逃さないように、スタッフが

張り付いて、人間関係を撮りためていく。

 

住人同士の衝突がおこったり、 お互いの好意がかいま見えたり、と言う

リアルな瞬間が捉えられある程度の結果を撮影したら

要らない枝葉を切り取っていく

結末から逆算して物語を作る行為、これって何かに似ていると

思ったが、私がひらめいたのは、何故か「盆栽」であった。

 

 

ウィキペディアで「盆栽」を引くと、

自然の風景を模して造形するのが特徴」とあり、

まさにリアルを模しているリアリティショーにふさわしい。

TIMS誌」の指摘した、日本のわびさびここに極まれり、

と言う感じである(強引すぎる結論)。

 

ja.wikipedia.org

 

 盆栽としての「テラスハウス

 

 

リアリティショーでは、よく「ヤラセ問題」が起きる。

「あいのり」では、なかなか恋愛できない

出演者を卒業させるため、誘惑して卒業させる

ヤラセ要員が投入された事があったり、

テラスハウス」では、出演者へのパワハラや、

キス手当を出されていた、などと週刊誌で報じられた事がある。

「バチェラー・ジャパン」にも、最後のバラを渡す相手を

番組側が変更させた、と言う記事が出たばかりだ。

 

テレビ番組だから、番組コンセプトにあわせる為や、

盛り上がりを重視して、出演者へ指示をしたり、

誘導するような事はあると思う。

だが、それをやりすぎると、ドラマチックにはなるが、

自然さ、リアルさが減っていく

指示、演出はほどほどにしてほしいものである。

実際、ヤラセが酷いと番組が終わってしまう事があるので、

ちょっとくらい盛り上がらなくとも、嘘にならない程度の

リアルさは、維持してほしい。

 

綺麗すぎる盆栽には、独特の味わいがない。

自然の持つ荒っぽさや意外性を残しつつ、

虚と実が混じった楽しいエンターテイメントが観れる事を、

今後も期待しております。